谿声山色 17 「 菩提心 bodai-sin 」
- 2021/05/20
- 05:03
正法眼蔵 谿声山色 17
「 菩提心 bodai-sin 」

祖宗 so-syu 師資 si-si
かくのごとく相承 so-zyo して
ひさしくなりぬ
菩提心 bodai-sin は
むかしのゆめをとくがごとし
( 今生の身をもって
( 一塔記念碑を建てる
( この行をもって仏道とする
( これが長く伝わって来ました
( しかしこの行を尊ぶ心は
( 昔話しのように
( 遠いものになったのです
あはれむべし、宝山にうまれながら
宝財をしらず、宝財をみず
いはんや法財をえんや
( このような尊い法があるのに
( この法に出会えず
( この法の価値を明かせない
( それは哀れとも言えます
もし菩提心をおこしてのち
六趣 roku-syu 四生 si-syo に
輪転すといへども、その輪転の因縁
みな菩提の行願 zyo-gan となるなり
( 今生の身をもって
( 一塔記念碑を建てよう
( そう思えたなら
( 苦界は何ら変わらないとしても
( 千年二千年先の
( 新しい世界を構築する
( その礎となるのです
しかあれば、従来の光陰 ko-in は
たとひむなしくすごすといふとも
今生 kon-zyo のいまだ
すぎざるあひだに
いそぎて発願 hotu-gan すべし
( 今まで空しく過ごして来たとしても
( まだ今生が終わらない間に
( 今生の身をもって
( 一塔記念碑を建てよう
( そう願うべきです
ねがはくは、われと一切衆生と
今生より乃至 nai-si 生生をつくして
正法をきくことあらん
きくことあらんとき
正法を疑著 gi-zyaku せじ
不信なるべからず
( 願わくは、私とすべて生は
( 今生からこの生を尽くし
( この身をもって
( 一塔記念碑・仏塔を建てよう
( この行を始めたなら
( この行を疑わず邁進しよう
まさに正法にあはんとき
世法をすてて
仏法を受持 zyu-zi せん
つひに大地有情 u-zyo ともに
成道 zyo-do することをえん
( この身をもって
( 一塔記念碑・仏塔を建てよう
( そのように始めたなら
( この身に由来する
( 喜怒哀楽から離れ
( この行を堅固に保つべきです
( 遂には、この行の成果が
( 新しい世界が構築される
( その礎となるでしょう
かくのごとく発願せば
おのづから正発心 syo-hosin の因縁ならん
この心術、懈惓 ke-gen することなかれ
( このように願うなら
( おのずと無理のない心境が
( 構築されて行くでしょう
( この成り行きは数式のように明確で
( 揺るぎのないものなのです
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