谿声山色 11 「 更に疑はず 」
- 2021/05/07
- 11:53
正法眼蔵 谿声山色 11
「 更に疑はず 」
又 霊雲 rei-un 志勤 si-gon 禅師は
三十年の辨道 ben-do なり
あるとき遊山するに
山脚 san-kyaku に休息して
はるかに人里を望見す
ときに春なり、桃華のさかりなるをみて
忽然 kotu-nen として悟道す
( 霊雲志勤禅師は
( 三十年にわたり
( 坐禅行を続けられた
( ある日、遊山にでかけ
( 山すそに休息し、遠く人煙を望みます
( 時は春、桃の花
( あわく咲きほこるを見
( 忽然と、心身の疑いが晴れます

偈 ge をつくりて
大潙に呈するにいはく、
「 三十年来 尋剣 zin-ken の客
.......幾回 iku-tabi か葉落ち又
.......枝を抽 nuki んづる
.......一たび桃華を見てより後
.......直に如今に至るまで更に疑はず 」
( 詩を作り
( 大潙禅師 (771-853) に呈上します
( 三十年来、船上にあって
( 川に落とした剣を
( 船べりにつけた印をたよりに
( 探すような事をして来た
( その間、桃の木は幾たび葉を落とし
( 枝を伸ばしたことでしょう
( ひとたび桃の花を見てからは
( もうこの心身を疑うことはありません
大潙いはく
「 縁より入る者は、永く退失せじ 」
すなはち許可するなり
( 大潙禅師これを読み述べられます
( 長く行をなし、機が熟しての縁
( それがくつがえることはありません
( 大潙禅師は、よしとされます
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