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谿声山色  10 「 一撃 iti-geki に所知 syo-ti を亡ず 」





正法眼蔵 谿声山色  10
「 一撃 iti-geki に所知 syo-ti を亡ず 」

また香厳 kyo-gen 智閑 ti-kan 禅師
かつて大潙 dai-i 大円禅師の会 e に
学道せしとき、大潙いはく
「 なんぢ聡明博解 haku-ge なり
.......章疏 syo-syo のなかより記持 ki-zi せず
............父母未生 mi-syo 以前にあたりて
..................わがために一句を道取 do-syu しきたるべし......

 ( かつて、香厳禅師が
 ( 大潙禅師の道場で学んでいた時
 ( 大潙禅師は述べられました
 ( あなたは聡明博識ですが
 ( 経書の中の知識からでなく
 ( あなたの父母が生まれる以前
 ( そこに立って、何か述べてみて下さい

香厳、いはんことをもとむること
数番すれども不得なり
ふかく身心をうらみ
年来たくはふるところの書籍 syo-zyaku を
披尋 hi-zin するに、なほ茫然 bo-zen なり

 ( 香厳禅師は、深く考えましたが
 ( 答える事能わずでした
 ( 深く自分を恨み
 ( これまで集めた書物を読み
 ( 答えを探しますが
 ( ただ茫然となるばかりです

つひに火をもちて
年来のあつむる書をやきていはく
...画にかけるもちひは
......うゑをふさぐにたらず
......われちかふ、此生 si-syo に
......仏法を会せんことをのぞまじ
......ただ行粥 gyo-syuku 飯僧 han-so とならん.....
といひて、行粥飯して年月をふるなり.

 ( 遂にこれまで集めた書を燃やし
 ( 「 絵に描いた餅は飢えを満たさず
 (..........今生に、仏法に出会うことは望まない
 (..........ただ、行粥飯僧として務めよう....
 ( こうして行粥飯を務め年月が過ぎました

行粥飯僧といふは
衆僧 syu-zo に粥飯を行益 gyo-yaku するなり
このくにの陪饌ai-sen 役送 yaku-so のごときなり

 ( 行粥 gyo-syuku 飯僧 han-so とは
 ( 修行僧の食事の世話をする役目です
 ( 食に関する世話係のようなものです

かくのごとくして大潙にまうす
.....智閑は心神昏昧 kon-mai にして
.........道不得 do-hutoku なり
.........和尚、わがためにいふべし...........

 ( 香厳禅師は
 ( 大潙禅師に述べました
 ( 行き詰まってしまいました
 ( ご指導を乞いたく思います

大潙のいはく
われなんぢがために
いはんことを辞せず
おそらくは、のちになんぢわれをうらみん

 ( 大潙禅師はお答えられます
 ( もし、私があなたを導けば
 ( おそらく後になって
 ( あなたは私を怨むはずです


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かくて年月をふるに
大証 dai-syo 国師の蹤跡 syo-seki をたづねて
武当山 buto-zan にいりて
国師の庵のあとに、くさをむすびて爲庵 i-an す
竹をうゑてともとしけり

 ( このようにして
 ( 香厳禅師の年月は流れました
 ( ある時、大証国師の跡を訪ね
 ( 武当山へ赴きます、そして
 ( 大証国師の庵の跡に草庵を建て
 ( 一人坐す生活を始めます
 ( 友は、自ら植えた竹でした

あるとき、道路を併浄 hei-zyo するちなみに
かはらほとばしりて、竹にあたりて
ひびきをなすをきくに、豁然 katu-nen として大悟す

 ( ある日、道を掃いていた時
 ( 小石が飛び竹に当たります
 ( 香厳禅師はその響きを聞き
 ( すっかり展望が開けます

沐浴 moku-yoku し
潔斎 ke-sai して
大潙 dai-i 山にむかひて
焼香 syo-ko 礼拝 rai-hai して
大潙にむかひてまうす
...大潙大和尚
.......むかしわがためにとくことあらば
.......いかでかいまこの事あらん
.......恩のふかきこと、父母よりもすぐれたり......

 ( 香厳禅師は身を清め
 ( 大潙山に向かって焼香礼拝し
 ( 大潙禅師に御礼を述べられます
 ( 大潙禅師、あなたが
 ( 教えてくれなかった御かげで
 ( 今日、自ら気付くことが出来ました
 ( この恩は父母の恩にも勝ります

つひに偈 ge をつくりていはく
...一撃 iti-geki に所知 syo-ti を亡ず
.......更に自ら修治せず
.......動容古路を揚 a ぐ、悄然 syo-zen の機に堕せず
.......処々蹤跡無し、声色 syo-siki 外の威儀なり
.......諸方達道の者、咸 koto-goto く上上の機と言はん......

 ( そして詩を作られます
 ( 竹は、小石の受けて響きをなします
 ( この身骨格は、坐の一撃を受け
 ( 威儀の響きをなします

 ( 父母未生 mi-syo 以前
 ( さらにさかのぼり永劫より続く
 ( 私がしでかし消すことが出来ないもの
 ( 宇宙が受け入れを拒むもの
 ( その 「 業 」 こそ
 ( 私の骨格筋肉五感の
 ( その在り様に他なりません
 ( しわくちゃの古いシャツにアイロンをかけるよう
 ( それを消せるのは、それを創った本人私のみです
 ( 無限の業、すなわち自らの立ち居ふるまいを
 ( 古仏の威儀でアイロンし伸ばす
 ( 無限の業は解放されて
 ( 宇宙の歩みの中へ帰って行きます
 ( 仏道は成仏を示すのです

この偈を 大潙呈す
大潙いはく 「...此の子、徹せり......

 ( この詩をみて
 ( 大潙禅師は述べられました
 ( この人は帰道を得たと






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